出版業界の歴史から出版物のトレンドを学ぶ
戦前に人気のあった雑誌
出版物は時代によりさまざまな特徴を持っています。それぞれの時代の読者の要求に合った書籍や雑誌が、トレンドとして広く出版されてきました。こうした出版物の歴史は業界の歴史とも大きく関わっています。日本で書籍や雑誌を取扱う会社が増えて、広く書籍が販売されるようになったのは明治時代の後期から大正時代です。この時代には講談社などの有名な出版社も設立されています。戦前の出版物のトレンドとして多くの種類の雑誌が発刊されたのは娯楽雑誌です。その中でも特に有名なのは『キング』という雑誌です。キングは講談社が販売していた一般大衆のための娯楽雑誌です。キングは日本ではじめて100万部以上の発行部数を達成した雑誌としても知られています。当時の日本の人口が現在よりも少なかったことを考慮すれば、この数字は現在における100万部とは異なった意味を持っています。キングには主に一般大衆向けの小説や講談、笑い話などが掲載されました。その他にも豪華な付録が毎号つけられていたこともこの雑誌の人気を支えていました。キングが広く売れたことにより、その後他の会社からも似たような雑誌が数多く出版され一つのトレンドが作られました。
戦争で変わっていった業界用語
日本における出版物のトレンドの元祖は、そのような大衆娯楽雑誌だったのですが、第二次世界大戦が始まるとその様相も大きく変わってきます。その頃の日本ではアメリカやイギリスと敵対関係にあったため、国内でも英語が敵性言語として使用を禁じられるようになりました。キングも『富士』という名前に変更になります。この時代は国をあげて戦争を行なっていために、出版物のトレンドもそのような時代の風潮を反映したものでした。国民の戦意を昂揚させることを目的とした雑誌や書籍が数多く出版され、書籍を作るために必要な紙の供給も不足していたために、それ以外のものは容易に出版できないような状況が続きました。こうした状況が変化するのは戦争が終わってからです。戦後しばらくの間は用紙統制などが行なわれていたために、キングなどの人気雑誌もすぐには戦前のような100万部を越える発行部数を回復することはできませんでした。しかし用紙統制が解除された後でも戦前に流行したような娯楽雑誌は昔のような人気を回復することはできませんでした。全く新しいジャンルの雑誌や書籍が新たなトレンドとして現れてくるからです。その最たるものが漫画を中心にした雑誌でした。
漫画雑誌という業界用語の流行
戦後の日本を代表する出版物のトレンドとして、多くの出版社から漫画雑誌が創刊されます。その草分け的な存在となったのが1959年に創刊された小学館の『週刊少年サンデー』と講談社の『週刊少年マガジン』です。特に講談社にとっては戦前に人気を博したキングが1957年に終刊していることから、この二つの雑誌の終刊と創刊は会社の歴史上、大きな意味を持っています。子供をターゲットにした漫画を専門にしている週刊誌というスタイルは、この二つの雑誌の成功によって日本に定着することになり、その後、多くの会社から似たような雑誌が出版されるようになります。その中でも『週刊少年ジャンプ』は特に多くの発行部数を達成した雑誌として知られています。最盛期には650万部を超える発行部数を達成し、これは日本国内における最大の発行部数であるとともに、世界でも類を見ないものであったために、ギネスブックにも登録されています。このような日本における漫画雑誌のトレンドはその後、日本の出版業界全体に大きな影響を与えています。子供向けの漫画雑誌の成功により新たに出版されるようになったのが、大人を対象にした漫画雑誌の創刊です。小学館の『ビックコミック』をはじめ、数多くの雑誌が創刊しました。
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