デジタル化に負けない出版業界の生き残り戦略とは?
デジタル化時代に伴う出版業界の動向
デジタル化が進んだ現代社会において、その媒体も大きく変化を遂げつつあります。オフィスに限定しても、今まで主流となっていた山積みの原稿や書類などの印刷物はデスクからなくなり、代わりにパソコンが1台置かれているといった光景が一般的となってきました。
アメリカ・ロチェスター工科大学のフランク・J・ロマーノ教授は、2003年9月に行われた自身が議長を務めるシーボルト会議において、「印刷業界が厳しく苦しい状況にあるのは確かだが、決して消滅することはない」と語っています。とは言え、この会議から十数年以上経過している現代では、何もしないで生き残ることは難しく、予防策を講じる必要があり、ロマーノ教授もこのことに言及しています。
デジタル化に伴い出版市場の大幅な減少となり、1996年のピーク時では1兆930億円を記録しいている一方、この20年近くで大幅な下落に転じ2014年には8,520億円と、ピーク時の45.5%も減少しています。
減少の大きな要因としては、電子書籍や電子雑誌市場の拡大が関係しているとされており、同年の電子書籍市場は1,260億円、電子雑誌市場は145億円となっており、これは紙媒体市場と比べると小さく感じますが、その影響力は図り知れないとも言えます。
紙媒体の出版物減少の大きな要因
出版物の売り上げ減少の大きな要因は、「インターネットの進化と普及」によることが一番です。では、その要因をより噛み砕いて考察してみたいと思います。
雑誌媒体においては、基本的に週刊や月刊物がほとんどであり、ウェブ情報を比較してもかなりのタイムラグは生じてしまいます。そのため、後追いでニュースやトレンドなどの情報を掲載する状況となり、情報における鮮度や迅速さの面ではどうしても勝ち目がありません。ネットニュースが無料で手軽に閲覧できる現代では、わざわざお金を出して知っている情報を得る人は少ないでしょう。さらに、こうしたウェブニュースがすぐに拡散する状況であるため、人によっては何度も同じ情報を目にすることもあり、あらゆる情報の飽きる期限が短くなってきていることも挙げられます。
近年では、検索サイトの連動広告にて、広告収入モデルになることでのウェブコンテンツの無料利用が拡大したことも要因の一つでもあります。検索サイトでは、広告収入が見込めるとさらに多くの情報を無料提供することが可能となるため、ユーザーのサイト利用率も向上するなど多くのメリットがあります。この検索業界の好循環が、更なる出版業界を小さくしているのです。
数十年後の出版業界生き残り戦略とは
更にデジタル化が進むであろう将来に向けて、出版業界はどのような方向性をしめしていけば良いのでしょうか。
経営学の格言には「成功の復讐」という言葉が存在します。メディア業界が大きく変動を遂げた現代において、これまでのやり方から市場環境に合わせた変革が必要となります。しかしながら、多くの出版会社のトップは、紙媒体が主流であった時代に大きな成功をおさめてきた人物ばかりであり、全く新たな発想でのビジネスモデルの構築を行うことは、非常に困難であることが想定されます。
こうした状況の中で、大手出版企業と音楽配信企業との包括的業務提携・資本提携・経営統合において金合意に達し、伝統的出版社とネット配信企業との変わった組み合わせが注目されました。しかし、一見すると意味があるのかと感じる経営統合ですが、大手出版社からすると、紙媒体である書籍や雑誌での成功体験から脱却するのに大きなきっかけとなりました。
これからの出版業界に必要な生き残り戦略としては、「トップの成功の復讐からの脱却」と、インターネット企業との業務提携で、同社の相乗効果を狙うことが有効であり、これまで培ってきたブランド力や取材・編集力などの強みを生かした、画期的なコンテンツ事業などへとシフトしていくことです。
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