出版業界の流通の仕組み~出版から小売まで~
出版流通の大まかな流れ
出版業界の流通は大きく分けて、「出版社」「取次」「書店」の三つの段階からなります。
「出版社」は本や雑誌を作ります。ほかの業種でいうなら、メーカーということになります。日本全国で大小合わせれば4300社ほどもあります。戦前は400社ていどだったので、戦後10倍の数になっていることになりますね。そのうちの八割ほどは東京に集中しています。
「取次」は書籍を出版社から仕入れて、書店に流通させる役目を果たしています。いわゆる本の問屋ですね。出版社と書店が直接取引をすることはめったにありません。日本全国で100社ほどあるといわれている取次が、本の流通を担っています。
「書店」は取次から仕入れた書籍を消費者に届ける役目を持ちます。つまり小売というわけです。日本全国で1万数千店もあると推定されています。また、コンビニエンスストアは本の小売として、大きな位置を占めています。日本で販売される雑誌の4割弱を販売しているほどです。
取次が存在するのは、出版社と書店の数が多すぎるためです。4000以上の元請けがそれぞれ、1万以上の小売への流通販売ルートを確保するのは、コストがかかりすぎて現実的ではありません。
「委託制度」と「再販制度」
出版業界には、他にはない特徴的な制度があります。「委託制度」と「再販制度」の2つです。
「委託制度」は言葉のとおり、本の販売を委託するということです。出版社は取次に委託し、取次は書店に委託します。委託制度で特に重要なのは、返本というシステムがあることです。書店は取次から仕入れた本を、任意に取次に返品することができます。そのさい本の代金は返却されます。このシステムのおかげで書店は売れ残りを心配せずに本を仕入れられるわけです。ただし、返本には期限が定められています。期限を過ぎた本は返すことができなくなり、書店が買い取ることになります。書店側には便利ですが、出版社にとっては赤字を抱え込むかもしれないリスクのある制度となっています。ちなみに書店も気軽に返品するというわけではありません。あまり返品が多くなると取次からの信用を失い、人気の本の入荷数を減らされるなどということもありえるのです。
「再販制度」は、メーカーが出版物の販売価格を設定し、それを取次や書店に守らせる制度です。この制度があるため、書店が勝手な値引きはできません。自由競争の原理に反した制度なのですが、書籍は文化を担う重要なものだということで特別に許可されています。
流通で重要な役割を担う取次
出版業界の流通制度で、もっとも大きな影響力をもっているのが取次です。
100社ほどあるといわれている取次ですが、シェアの大部分を2社が占めています。現在の流れとしては、小さな取次はこの2社に吸収される業界再編が続いています。
本を書店に卸すのが取次の役割ですが、どの書店に何冊配本するかという決定も取次がします。新刊の発行部数は一定なので、すべての書店の要望する注文冊数より発行部数の方が少ないこともありえます。そんな時に、各書店で売れ残りがないように、そして早く売れすぎて在庫切れにならないように、と考えて調整しているのです。大学の近くにある書店には専門書を多く配本するなど、書店の立地や客層を考えて本の割り振りはなされています。しかし現在日本では、一日につき200点もの新刊が発行されています。これをうまく割り振るのは容易ではありません。
また、出版社が書籍を発行する部数も、取次との相談によって決められています。過去の販売実績や返本率から、どのていどその本が売れるのかを検討するわけです。
出版不況と言われて久しくなりました。出版社ももちろんですが、取次も苦しい経営が続いています。さらに淘汰と業界再編が進んでいくでしょう。
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